紫陽花が咲くころ馬の祭りへやって来る

初夏のある朝、家族とともに宿を後にし、目指した場所は京都の馬の祭りだった。地図に示された古社参道は、石畳が湿気を帯び、端に植えられた紫陽花が涼しげに咲く。

4人で手をつなぎながら進むと、緑濃い森が切れ、静かな広場へと出た。遠くから太鼓による低い音が響き、胸をじんわりと震わせる。

神事が始まり、鮮やかな衣装を身にまとう方々と、威厳ある動物達がゆったりと歩みを進め、細かく刺繍された鞍や飾り金具の輝きが陽光を弾く。

父はカメラに収め、母は手すりにもたれ、息子へ京都の馬の祭り解説を重ねた。空中に揮毫する妙技は、まるで時間が止まったような幻想的な光景で、自然と笑みが浮かんだ。

休憩時に、特設茶席で、甘味を味わいながら、家族旅行を振り返る時間を持つ。

母が一番初めに京都の馬の祭りを訪れた話をぽつりと始め、当時まだ幼かった私が不安そうにする様子を、みなが声を揃え笑う。

意識せず始めた会話が、過去を繋ぎつつ絆を深める役割を担う。是非とも継続するべきイベントだろうね。